創薬基盤科学研究所の概要

創薬基盤科学研究所は、組織、人材、設備の面での充実を図り、創薬の入口から出口までをカバーする研究所として再出発しました。

名古屋市立大学大学院薬学研究科は、アカデミア創薬の先駆と言うべき、喜谷喜徳名誉教授らの開発した抗ガン剤オキサリプラチン生誕の地です。また、同じく医学研究科では、上田龍三名誉教授らが本邦初の抗腫瘍抗体医薬品モガムリズマブの開発に大きく貢献しました。そして、全国的にもアカデミア創薬の機運が高まりつつあった平成23年に、本学の創薬基盤整備及びそれに基づく研究展開のため創薬基盤科学研究所を設立し、創薬支援分子設計合成部門と臨床試験研究部門の2部門をおき、本学のリソース・特徴を生かしながら創薬基盤形成を進めて参りました。

創薬支援分子設計合成部門では、本学に特徴的な疾患・生体機能関連のスクリーニング系を活用して、化合物ライブラリーから原石と言うべきヒット化合物を見出し、標的たんぱく質の立体構造あるいはヒット化合物の構造と活性の相関から、構造最適化(研磨)を行い、実用性にもつながる優れた化合物(宝石)を創製することをめざします。

また、これまでに有効なスクリーニング系のなかったものに対して、新規で有効な蛍光・化学発光プローブを開発し、独自のスクリーニングを行い、創薬を支援します。さらに、フェノタイプを指標に開発した高活性化合物を活用して、その分子に結合する未知のたんぱく質の発見を行い、疾患メカニズム解明にも役立てていきます。

加えて、低分子化合物のみならず抗体やたんぱく質などのバイオ医薬品につながる研究もの創薬も手がけて参ります。

一方、臨床試験研究部門では、臨床系薬学研究者を中心に、前臨床関連となる候補化合物等の体内動態や代謝、副作用や毒性を明らかにします。加えて、薬物送達の観点から、薬物の作用を最大限に引き出し、副作用を抑えるDDSの開発にも取り組みます。

また、レギュラトリーサイエンスの観点からは、臨床研究に関するビッグデータを利用した医薬品の副作用等の解析により、医薬品の実用化の迅速化に資する研究を総合的に実施します。さらに、名古屋市立大学附属病院の臨床医の協力を得ることで、臨床研究や治験につながる研究への展開も推進します。

以上のような研究を効率的かつ有機的に行うため、平成27年に、これまでの創薬支援分子設計合成部門と臨床試験研究部門を改組し、新たに、シーズ探索部門、創薬支援合成・インシリコ創薬部門、薬効スクリーニング部門、次世代創薬・個別化医療部門、薬物動態・薬物送達部門、安全性評価部門、臨床試験部門の7部門を設置し、組織、人材、設備の面での充実を図り、創薬の入口から出口までをカバーする研究所として再出発しました。

そして平成28年には、文部科学省の「共同利用・共同研究拠点」に、本研究所が「創薬基盤科学技術開発研究拠点」として、認可されました。現在これに伴うスクリーニング機器等の充実も相まって、学外との共同研究拠点として活発に活動するための基盤の整備を急ピッチで進めているところです。